健康情報 記憶

記憶のカラクリ

記憶には脳の海馬という部分が深く関係しています。脳の中心部に存在し、形がタツノオトシゴに似ていることからこの名前がつけられました。この海馬に情報は一時的に蓄積され、記憶されます。しかし、一時的な刺激では時間が経つにつれすぐに失われてしまいます。何度も繰り返し同じ事を覚えていくうちに海馬の同じ場所が定期的に刺激され、ついには長期記憶となって大脳新皮質の連合野(特に考えて判断する、行動するといった高度な知的活動をつかさどる部位)という場所に保存されることが分かっています。記憶力を高めるには、この部分を定期的に刺激する事が大切になってきます。

〜記憶力の低下と痴呆〜

単に記憶力が衰えることと、痴呆とを混同して考えがちですが、痴呆は、もの忘れだけではなく、脳血管障害などの病気が原因で、知能の低下や記憶の障害が起こり、社会生活をきたす状態を指します。痴呆の原因となる病気は様々ですが、原因の80%を占めているのが、脳血管性痴呆とアルツハイマー型痴呆です。両者の比較はほぼ同じで、この二つの混在性痴呆も少なくありません。脳血管性痴呆は脳出血や脳梗塞、くも膜下出血などの脳血管障害が起こった後に、症状が出てくる痴呆ですから、脳血管障害を防ぐことが痴呆の予防にもなります。また、アルツハイマー型痴呆は、神経細胞が変性して減少し、脳の萎縮をきたして痴呆を起こす病気ですが、原因はまだ解明されていません。

記憶を良くするコツ

記憶は感情と深く関わっており、自分の興味のあるもの、好きなものは早く覚えますが、嫌いなもの、不快なものは忘れがちになります。丸暗記が最もうまくできるのは2〜3歳までで、ある程度の年齢に達したあとは内容に興味を持ち、理解して覚える方法が効果的になります。以下に記憶力を高める方法をいくつかご紹介するので参考にしてください。

●いろいろな感覚や運動を用いる
視覚や聴覚、嗅覚などの感覚をうまく導入するとより覚えやすくなります。英単語を覚えるときは紙に書きながら、発音してみます。書いたものを目で見、口にしたことを耳で聞き、さらに書くという運動感覚も動員していますから、からだで覚えるという要素も加わって効果的な記憶法になります。
●覚えやすいように意味づける
ゴロ合わせや連想を用いる方法です。ゴロ合わせはリズミカルにつくるのがコツです。
●何度も反復して練習する
繰り返し練習するほど、覚えやすくなります。ただし、睡眠時間まで削って詰め込んでもそれほど効果はあがりません。気分転換をしながら反復練習をしましょう。
●覚える内容を整理する
内容に応じて分類して整理します。例えば、「猫、松、パン」なら、まず、「動物、木、食べ物」と分類したほうが、そのまま覚えるより忘れにくくなります。
年をとるにつれて記憶力が衰えるのは仕方のないことですが、上に挙げた方法を実行したり、こまめにメモをとる習慣をつけるなどのエ夫で能カの衰えをカバーすることができます。

脳の働きを良くするライフスタイル

脳細胞の機能を維持するためには、多くの血液と酸素が必要です。その血液と酸素を送り届ける血管の健康を保つことが、脳の働きを良くし、脳の老化を防ぐポイントとなります。
●血管をイキイキ保つ
塩分や脂肪分の取り過ぎに気をつけましょう。また,タンパク質には血管を強く丈夫にして動脈硬化を防ぐ働きがあります。肉や魚、卵、乳製品、大豆などの良質のタンパク質を十分にとりましょう。中でも魚は高タンパク質のうえ、肉類や野菜類には含まれていないDHAやEPAという不飽和脂肪酸を多く含んでいます。DHAやEPAはコレステロール値を下げたり、血栓ができるのを防ぐ作用があるだけでなく、血管を柔軟にする作用があるといわれています。特にDHAは脳を活性化させる働きがあり、DHAを与えて飼育されたマウスは記憶学習能力が優れていることが証明されています。DHAやEPAは特に青魚に多く含まれ、生のまま食べる方が調理法によるロスが少ないとされます。刺身であれば、中トロ4切れ程度で1日に必要な量を摂敢できます。
●普段から記憶力を養うエ夫を
パソコンやワープロの利用によって暗記や暗算など、ものを覚える機会が激減しています。よく使う電話番号は覚える努カをしたり、買い物のおつりの計算を暗算でしてみる、というように日常生活のなかで記憶力を鍛える工夫をしましょう。
●体を動かし血流を良くしましょう
適度な運動は脳の血流を増やし、脳内物質であるアセチルコリンやエンドルフィンの分泌を促進します。これは、神経細胞間の情報のやりとりをスムーズにし、脳の働きを活発にする効果があります。また、血圧やコレステロールの値によい影響を及ぼし、血管の老化を防ぐことにもつながります。運動に縁のない人には、ウォーキングがおすすめです。
●食事はよく噛み、ゆっくりと
硬い物を食べ、よく噛むことによって、脳の味覚や感覚などに関係する神経細胞への血流が増加します。さらに、記憶を高める脳内物質コレシストキニンは噛む刺激によって分泌が促されるので、よく噛みゆっくり味わうことは、脳によい刺激を与えます。同じ食材でもステーキ肉はひき肉の倍近く噛む必要があり、食材の切り方や調理法によっても噛む回数は増やすことができます。



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