健康情報 SARS

SARS「サーズ」

<概要>
SARS(Severe Acute Respiratory Syndromeの略で「サーズ」と発音)は、どのような病気なのでしょうか。まず概要を簡単にご紹介しましょう。 当初、中国や香港及びベトナム・ハノイで報告され、数ヵ国へ拡がりを見せているSARSの感染者は、2003年4月30日現在、5000人以上にのぼっています。不明な点も依然として多いSARSですが、これまでに次のようなことが分かってきています。まず重症例、死亡例もありますが、回復した例も多く、致死率はそれほど高くないということです。また、患者の大部分はSARS患者に医療行為を行った病院スタッフ、患者と接触のあった家族などで、感染した人と濃厚な接触をしなければ、人から人に伝播する可能性は低いと考えられています。医療従事者に関しても、適切な防御策(マスク・手袋の着用や施設の消毒等)を講じることで、感染を防ぐことが可能と考えられています。さらに4月16日にはWHO(世界保健機関)より原因ウイルスが断定されました。現在、世界中の多くの保険医療関係者が危機感を持ち、協力してこの健康危機に立ち向かっています。それでは詳細について見ていきましょう。

<症状と診断>

まずSARSの典型的な症状ですが、高熱、乾いた咳、息切れ、呼吸困難などで、肺炎やインフルエンザと類似しています。胸のエックス線撮影をすると肺炎の特徴が見られます。感染してから発症までの潜伏期間は2日〜7日で、通常3日〜5日が多いとされています。通常は約1週間で8割ほどは改善するといわれていますが、重症化すると死にいたります。
では、どのような症状の場合にSARSを疑えばよいのでしょうか。WHOでは、SARSを疑う対象として以下の3点を挙げています。

@38度以上の急な発熱
A咳、呼吸困難などの呼吸器症状
B10日以内のSARS伝播確認地域への渡航者または10日以内のSARS患者との接触者
上記3点をみたす場合には、胸部レントゲン撮影や生化学検査など、さらなる詳しい検査を行います。
[SARS伝播確認地域(4/30現在)]
地域
カナダトロント
シンガポール シンガポール
中国 北京・広東省・山西省
香港・台湾
内モンゴル自治区
アメリカ特定地域の指定なし
イギリスロンドン

<原因と感染経路>
次に原因と感染経路ですが、WHOでは4月16日、SARSの原因はコロナウイルスの新種であると断定しました。ウイルスは「SARSウイルス」と命名されています。

コロナウイルスとは
コロナウイルスは、ライノウイルスやアデノウイルスム同様、普通感冒(風邪)の原因ウイルスであり、鼻かぜの約15%がこのウイルスによるものとされています。微生物学的にはコロナウイルス科に層するウイルスで、直径80〜130nmのRNAウイルスです。抗原的に2種に分類され、2〜4年間隔に冬に流行するのが特徴です。コロナウイルスが感染しても普通は症状は軽く、数日で自然に治ります。今回のSARSの原因ウイルスは、このコロナウイルスが変異したものであるとされています。


また、感染経路として現在までに想定されているのは、患者の飛沫や鼻汁などの分泌液を介するというものです。発症者の多くは、患者に関係した医療従事者及び患者の家族などで、容易に多数の人に感染が拡大する疾患ではないと考えられています。感染には多くの場合、密接な接触が必要と考えられますが、まだ不明な点も多く残っています。

<治療と対処法>
残念なことに、SARSの治療法は現在のところまだ見つかっていません。抗生物質は、SARSの進行抑制に有効でなく、抗ウイルス薬で一定の効果はあるようですが、根本的な治療法ではありません。今後研究が進んでいくにつれて、感染の有無が分かる検査キットの開発は早期に期待されますが、治療薬やワクチンの開発には数年かかることが予想されています。そのため、症状が重くなる前の早期診断、そして予防が大切になってきます。
では私たちができる予防法として何があるのでしょうか。
第一の予防法は感染者との接触を避けることです。そして「手洗い・うがい・マスク」等の標準的な感染予防があげられます。また、目・鼻・口を触る時は清潔な手で触るようにしたり、体調を整えておくことも重要です。十分な栄養と睡眠をとる、無理の無い生活を心がけるなど、健康的な日常生活を送ることが何より大切です。
特に抵抗力の弱い幼い子供やお年寄りは、できるだけ人込みを避け、体調管理に注意を払いましょう。そして、もし38度以上の急な発熱、咳などの呼吸器症状があらわれた場合には、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。
受診する際の留意点として、あらかじめ医療機関に連絡すること、また外科用マスクをつけること、そして渡航歴や患者との接触の可能性を伝えるようにしましょう。



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